断崖のアイ

*血の刃



 ナフタリは眼前の光景に眉を寄せた。

「なるほど」

 足下の鍵を見下ろし、小さくつぶやく。

 武器は全て奪ったはずだが、まさか──ベリルが掴んでいたであろう鉄格子の部分が、削り取ったように消失している。

『細胞の再構築化』

 体の損傷具合により、傷の回復方法は異なる。血の量からみて、相当な損傷だったのだろう。

 修復だけでは追いつかず、接していた部分にある物質の分子を組み替えて細胞を構築した。

「そんな手があったとはね」

 苦々しく発した。

 かなりの痛みがあっただろうに、それに耐えたか。喉の奥で舌打ちし、体を反転させる。
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