断崖のアイ
「甘いだけではない……血による力の増幅を避けている」

 血は悪魔の召喚にはかかせないもの──血が流れるならば、いくらか死んでも構わないと考えていたナフタリは表情を険しくする。

「まったく、ことごとく我々に反抗しますか」

 それが甘いというのですよ。

 この世界はどのみち、神とサタンの間にあるものだ。ならば、どちらかに寄るのは当然のことだというのに。

 人間は所詮、どちらかのモノだ。

 その凝縮された存在が──

「あなたですよ。ベリル・レジデント」

 誰もいない空間に発し、低く笑みを絞り出した。


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