断崖のアイ
先ほどの部屋より、そう遠くない場所──ベリルは暗闇で息を潜める。
ここに来るまでに4人ほどと出会って麻酔カートリッジを奪ったが、聞こえた放送で手元にある数だけしか使用不可になった事を知り、喉の奥で舌打ちした。
壁に背を預けてしゃがみ込む。
何度、こうして同じことを繰り返しただろうか。
捕らえられる度に、他人の口から語られる己の素晴らしさ──そんなものは私の知ったことではない。
語られるような生き方をしようとは思わない。