断崖のアイ
混乱のなかベリルを捕らえられる者はおらず、彼が通り過ぎた事さえも気付かない者が大半だ。
「あんた」
「!」
振り返ると、武装した女が立っていた。
「上手く逃げ出せたんだね」
「お前か」
自分を捕らえた相手に目を細める。
「あんたのためにやったんじゃないよ」
「解っている」
ドシンと揺れたあと、女はニヤリと笑んで去っていった。その背中を見送り、気配を探るように周囲を見回す。
「そろそろか……」
つぶやいて外に向かった──