断崖のアイ

*消えゆく蜃気楼


「何?」

 到着した泉たちは、仲間からの報告に眉を寄せた。

「まさか彼が?」

「それもあり得る。割とジッとしてないタイプだからね」

 オレたちより先にそこから抜け出したとしても同じなのに……カーティスが薄笑いと共に応えた。

 それに、ユーリは苦い表情を浮かべる。

 泉の仲間がすでに現地に飛んで監視しているのだが、あの場所にいる人間を1人残らず逃さないためだ──あとはベリルを奪還すればそれで完了となる。

 その繰り返しが続いていたとしても、彼の心は少しも変わらないのだろう。

 わたしは、変わらずにいられるだろうか。そんな心の強さを持ち続けていられるだろうか……大型ジープに乗り込む泉たちのあとに、ユーリも滑り込んだ。

< 176 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop