断崖のアイ
「貴様……裏ヴァチカンか」

「!」

「そうか、貴様らの仕業だな」

「違います」

 男の敵意に、右手は自然と腰に提げている武器に触れる。

「貴様らには兵士がいるというのに、こちらにはまともに戦える者がごくわずかだとは」

 悔しげにこぼす男にユーリは眉を寄せた。

「堕落を追求する者が日頃の鍛錬などするでしょうか」

「言ってくれる」

 喉の奥からクックッと漏らすと、素早くハンドガンを手にして引鉄(ひきがね)を引いた──胸元めがけて走る銃弾は甲高い音を立て、ユーリが手に持っている30㎝ほどの棒状のものに弾かれた。
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