断崖のアイ
「ベリル!?」

「──っ」

 小さく呻いたベリルの腕に、注射針が刺さっている。

「そいつらにお前の理屈が通じるとでも思っているのか」

 背後の声に振り向くと、泉とカーティスがそこに立っていた。

 周囲の状況を確認し男に視線を戻すと、その胸には泉の武器が深々と沈み込んでいた。

「ぐっ……あなたは、ルシファー様にこそ相応しい」

 アシェル・ベリル──つぶやいて息絶える。

「アシェル? 確かヘブライ語で『祝福された』という意味が」

 転がっている男を呆然と見つめていたがベリルがよろめき、それを支えた。

「麻酔が……」とユーリ。

 眠気と戦いながら、ベリルは泉に鋭い視線を送る。

「解ってる」

 その言葉に、意識を遠ざけた。
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