断崖のアイ
それから、近くのホテルにベリルを運んだユーリはベッドで静かに眠るその顔を見下ろす。
治安が良いとは言えない国だが、きっと泉たちが周囲を固めていると思うと妙に安心出来た。
「……」
窓から見える風景に目を移す。
暗闇をつれてくる紅は、おぼつかない町並みを消し去るかのように黒を徐々にまとっていく。
苦い表情を浮かべたあと、デスクにあるノートパソコンを開いた。
しばらく起動画面を見つめ、おもむろにURLを打ち込んだ──限られた人間のみが知るページ。
表向きは予防線のためか、聖書の言葉がつらねてある。
しかし、何もない場所にカーソルを合わせクリックするとパスワード入力間画面が現れた。
それを数秒ほど見つめたユーリは、やや深く呼吸してパスワードを打ち込む。
多くの項目が並ぶなか、一つの文字に目を留め、躊躇いながらも開いたページに青年は眉を寄せた。