断崖のアイ
裏ヴァチカン──湿り気を帯びた石畳の通路は、地下の特性を遺憾なく発揮し常に一定の気温を保っている。
肌寒ささえ感じるほどだが、冷たい灰色の煉瓦がそれをいっそう寂寞(せきばく)とさせる。
「アイアス司祭」
「!」
呼ばれて、あせた金髪を揺らし振り返る。キャソックを身にまとった青年は軽く会釈すると、呼び止めた理由を説明する。
「! 外からのアクセス? 場所はどこです」
「ジンバブエです」
それを聞いてしばらく思案した。
「もっと詳しく特定してください」
「解りました」
遠ざかる背中を見つめ、アイアスは目を細めた。