断崖のアイ
ベリルは静かに目を覚ました──ベッドのスプリングで、ホテルの質が感じ取れる。
「おはようございます」
すぐ側で声がして、そちらに目を向ける。
「体の方は大丈夫ですか」
発して、手に持ったグラスと水差しをナイトテーブルに乗せた。
まだついてくる気なのか……とユーリを見上げて溜息を吐く。
「彼らは、あなたの意向を汲んでいたのですね」
「!」
差し出されたグラスを受け取る。
「私の意向ではない」
彼らはただ便宜上、ベリルの意向に沿う形を取っただけに過ぎない。
グラスの水を口に含み、やや目を伏せた。
目の前で殺めていないだけで、本当に殺していないのかは解らない──それだけで安心出来るほど、単純でもない。