断崖のアイ

 薄暗い空間──湿った空気と肌寒い気温に冷たい石畳が、したたり落ちる水滴を響かせる。

 1人の男が、1枚の扉の前に立っていた。

 低く唸り声を上げるその影を、小さな格子窓から覗く。

 その気配に気付いた影は、黄金色の瞳を扉の向こうの男に向けた。

「お前の力が必要なのだ」

 男は影につぶやく──



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