断崖のアイ
「違うのです。わたしは──」

「無駄だ」

 注がれる敵意に、眉をひそめながらベリルが応えた。

「いけ」

 鋭い視線を降ろすと、そこにいた獣は唸りを上げてベリルに向かっていく。

[ガルァー!]

 人とも野獣ともつかない叫びと共に、ソレはベリルに飛びかかった。

「!? ベリル! アイアス司祭、止めてください!」

「何故だね。捕らえなければならない存在ではないか」

 冷たい司祭の言葉に喉を詰まらせる。

 ベリルは、爪の攻撃をさらりと避けて未だ唸りを上げる獣を見つめた。その様子を苦々しく見やり、ユーリはアイアスに険しい視線を投げる。
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