断崖のアイ
「父なる神は全てをお赦しになられているのではありませんか!?」

 全てを赦し、その腕(かいな)で包み込む慈悲深き存在ではなかったのか!

「それは神が生み出された存在のみだ。この世は父なる神のものである、神より出でず徘徊するものはどのような存在でも赦してはならない」

「!」

 それは都合の良い理屈ではないのか!?

「我らに仇なすおそれのあるものは封印し、消し去らねばならないことは理解していたのではないのかね? 今更なにを言う」

「それは……」

 そうだ──わたしは今までそれを信じ、疑うことはなかった。

 神の子である我々に危機を運ぶ存在を赦してはならない。それは、少しでも神を哀しみから遠ざけるための必然的な──
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