断崖のアイ
*予兆
「!」
駐めてあった黒いセダンに乗り込もうとしたとき、ユーリはふと気がつく。
「ライカンスロープは……」
つぶやいてアイアスに目をやると、男は何も言わずに視線を外した。
「まさか、何故です!?」
どのような存在もベリルに敵うとは思えない、相手は不死だというのに──!
「神に仇なす者に深入りしてはならない」
どうせ奴らは逃げられないのだ。
「ユーリ!」
駆け出そうとした青年をアイアスは強く呼び止めた。鋭い眼差しに喉を詰まらせ、ベリルのいるであろう方向を見つめた──