断崖のアイ
 獣はエメラルドの瞳をただじっと見つめて牙を剥く。

[ギャン!?]

 かすった刃に熱い痛みを感じて後ずさり、右腕を見やった。

 まるで、火にあぶられたように焼けただれ微かにシュ……という音が立つ。ライカンスロープは驚異的な回復力を持つが、それが役に立っていない。

 獣は改めてベリルの手にあるダガーを眺めた。

 銃弾でさえもこの獣には効かないというのに、初めて感じる痛みに警戒を強める。

[ニン、ゲンなど滅びればイイ]

 カタコトながら発する。

「お前もまた人であろうに」

[オレはチガウ]

 人間など捨ててやる。
< 201 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop