断崖のアイ
[モウ、いい]

「!」

 獣はカッと見開き、力の限り高く飛んだ。

「──っ」

 本気だと理解したベリルは、ダガーの柄を強く握りしめた。

[ギャウアァ!?]

 空気を切り裂く叫びあと、獣は弱しく地面に倒れ込む。絶え絶えの呼吸で必死に胸を上下させ、ひざまづいて見下ろすベリルを一瞥した。

「何故だ」

[も、もウ……疲れタ]

 充分に生きた、これ以上生きる事は敵わない。
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