断崖のアイ
◆第9章~ここから続く物語
*残された疑問
裏ヴァチカンの地下深く──異様な静けさの中に時折、小さな呻き声が石畳の通路にじわりと流れていく。
その空間を切り裂くように靴音が高くこだまし、しばらく続いていた足音がふと分厚い木の扉の前で止まった。
さびた金属のプレートには英数字がいくつか刻まれていて、中の様子を小さな格子窓から垣間見る事が出来る。
じっとりと肌寒く、通路の灯りだけで中の様子を窺うには、いささか目を凝らさなければならなかった。
「あなた方は何故、生まれたのですか」
影は、か細く問いかけるようにつぶやく。
入り口の上部には『 Vampire』と表記されていた──狭い暗闇にある赤い2つの光りがその人物を捕らえ、威嚇するように睨み付ける。
血のような輝きに表情を変えず、しばらく見つめたあと薄く笑みをこぼした。
「そうですね。彼ならきっと愚問だと答えるでしょう」
どことなく嬉しげに発し、ずらりと並ぶ扉の前を通り過ぎていった。