断崖のアイ

 それから2年後──ヴァチカンの地下、裏ヴァチカン。

「なんだと!?」

 報告を受けたアイアスは慌てて、神父たちの宿舎のある階に駆け出した。

「ユーリ!」

 勢いよく開いた扉の向こうには名を呼んだ人物の姿はなく、暗い室内にゆっくりと踏み入る。

 ベッドの上には、キャソックが丁寧に折りたたまれていた。

 決別の表示かとも体を強ばらせたが、どこを探してもロザリオは無い。アイアスはそれに少しホッとした。

「ユーリ、どこに……」

 誰にも、何も言わずに姿を消した青年を、アイアスはどう追えばいいのか考えあぐねた。

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