断崖のアイ

 ユーリの消息は以前として掴めないらしく時折、アイアスがベリルの視界に入る事があった。

『U n G』は、ベリルの封印を諦めた訳ではない。

 しかしその困難さから、派遣する神父を選びあぐねていた──さしたる特別な力も無い相手が、これほどまでに手を焼く存在などと想像すらしていなかっただろう。

 最も捕らえるべき存在であるベリルを眺めていなければならないのは、彼らにとって計り知れない屈辱だ。

 もちろん、ベリル本人はそれを許容するつもりは無い。

 拮抗(きっこう)する組織のどれかを許容すれば争いは必至、その中心に己がいる事をベリルはどれほど滑稽に感じているか。

 何故ユーリの同行を許したのか、ベリル自身にも解らない。長い孤独を少しの間でも埋めようとしたのだろうか。

 それとも──?

< 209 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop