断崖のアイ
 放たれている殺意にベリルは泉の前に立つ。

「どけよ」

「よせ」

 止めようとするベリルを押しのけてハンドガンを手にした。

 そのとき──

「は~い、そこまでね」

 明るい声にベリルと泉は振り向いた。

「カーティス?」

 そこにいたカーティスに泉はぎろりと睨みを利かせる。

「抜けたんじゃなかったのか」

「そう。だからここに来たの」

 1年前、カーティスは突然に組織を抜けたいと言い出した。

 もちろん、そんな事が許されるはずがない──そうして彼は誰に告げることもなく、ある日こつぜんと姿を消したのだ。
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