断崖のアイ
「イズミさ、ここでベリルと争ったって時間の無駄だろ? だったらオレに任せろよ」

「なんだと?」

 カーティスの提案に、イズミは眉を寄せる。

「いい話だと思うけどね。あんたはベリルを護れさえすればそれでいいんだろ? 穏便に済ませてやるんだから文句はないよね」

 相変わらずの軽い物言いにイズミは口の中で舌打ちをし、数秒ほど睨み付けて木々の影に消えていった。

 残されたベリルがふと、男たちを見やると、見知らぬ数人の影が彼らをどこかへ連れて行こうと抱えている。

「心配しないでいいよ、悪いことはしないから」

 眉を寄せるベリルに明るく応える。

 いつものカーティスだが、どこかが違う──ベリルは怪訝な表情を浮かべて、近づく彼を見つめた。
< 213 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop