断崖のアイ
 なんだろうか、彼の表情は何かを見いだしたように輝いているように見える。

 それは、彼にとってとても重要なものだったに違いないが、自分を見る視線の変化にベリルは驚いた。

「なにがあった」

「別に大したことじゃあないよ」

 軽く手を揚げて示すと、瞳の奥にある輝きを強めた。

「これからはあなたの心配事を減らせる」

「どういう意味だ」

「もっと自由に生きられるってことさ」

 あなたらしく、あなたのしたいように──恍惚とした表情を見せて語るカーティスに、ベリルは何かの狂気を見て取る。

 何か影を背負ったような眼差しはどこにもなく、ただ輝く瞳でベリルを見つめている。

「何があった」

 もう1度、ゆっくりと尋ねた。

 するとカーティスは口の端を吊り上げ、わずかに声を低くした。

「いずれ解るさ」

 それだけ発すると、闇の中に消えていった──

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