断崖のアイ
車は街の外れ近くにある自然公園の脇に止まる。午前という事もあり、人影はまばらだ。
「中にいるそうです」
「ありがとう」
微笑んで、気持ちを切り替えるように険しい表情で振り返った。
両脇に芝生の植えられた道を歩く。清々しい日差しが木々の葉を照らし、木漏れ陽が地面に美しい文様を作っていた。
ジョギングや散歩をしている人間をゆっくりと窺いながら歩く。
「!」
その影たちの中に違和感のある背中──ベリルだ。
気付かれないように距離を保ちあとを追うと、彼は雑木林の中に入っていった。逃すまいと目を凝らすが決して多くは無い木々が時折、視界を遮りわずらわしく眉をひそめる。
しばらく追いかけていたが、太い幹が彼の姿を隠した次にはもう見えなくなっていた。足早に消えた辺りに立って周囲を見回す。
「……見失った?」
溜息混じりに肩を落としたその時──
「誰を捜している」
「!?」
背後からの声にビクリと体を強ばらせる。高鳴る鼓動を抑えてゆっくり振り返った。
「──っ」
初めに飛び込んできたのはその瞳、鮮やかな緑はエメラルドのように輝き中性的な面持ちに見合う細身の体型は強烈な存在感を放ち上品にそこにあった。
ゆったりしたソフトデニムのパンツに長袖の前開きシャツと腰までの薄手のコートを合わせた格好だ。
身長は174㎝とデータ通り、180㎝の青年よりも低い。
「中にいるそうです」
「ありがとう」
微笑んで、気持ちを切り替えるように険しい表情で振り返った。
両脇に芝生の植えられた道を歩く。清々しい日差しが木々の葉を照らし、木漏れ陽が地面に美しい文様を作っていた。
ジョギングや散歩をしている人間をゆっくりと窺いながら歩く。
「!」
その影たちの中に違和感のある背中──ベリルだ。
気付かれないように距離を保ちあとを追うと、彼は雑木林の中に入っていった。逃すまいと目を凝らすが決して多くは無い木々が時折、視界を遮りわずらわしく眉をひそめる。
しばらく追いかけていたが、太い幹が彼の姿を隠した次にはもう見えなくなっていた。足早に消えた辺りに立って周囲を見回す。
「……見失った?」
溜息混じりに肩を落としたその時──
「誰を捜している」
「!?」
背後からの声にビクリと体を強ばらせる。高鳴る鼓動を抑えてゆっくり振り返った。
「──っ」
初めに飛び込んできたのはその瞳、鮮やかな緑はエメラルドのように輝き中性的な面持ちに見合う細身の体型は強烈な存在感を放ち上品にそこにあった。
ゆったりしたソフトデニムのパンツに長袖の前開きシャツと腰までの薄手のコートを合わせた格好だ。
身長は174㎝とデータ通り、180㎝の青年よりも低い。