断崖のアイ
「我らがどういった組織か、解っているだろう」

「はい」

「人類と神に仇なす存在を捕らえ、封印することが使命である」

 人類の歴史にあってはならない存在──それを『ミッシング・ジェム』と呼ぶ。

「その男は不死なのだよ」

「!?」

「存在自体が罪なのだ」

「? どういうことでしょうか」

 彼の問いかけに、男は立ち止まり険しい表情を浮かべた。そして青年に向き直り低く、くぐもった声で応える。

「その男はアルカヴァリュシア・ルセタで造られた」

「……造られた?」

 おかしな物言いに眉をひそめる。

「その国のことは知っているな」

「はい、ヨーロッパに位置する小国ですね。50年ほど前に滅びましたが……」

「あの国は科学技術に力を入れていた。極秘に人工生命体の研究もしていたのだ」

「だからといって彼が……」

 さすがに疑わしいと青年は苦笑いを浮かべた。そんな青年の表情にも男は動じず、引き結んでいた口を開く。
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