断崖のアイ
「あなたは……初めから不死なのですか?」

 そう問いかけると、少し驚いたように青年に顔を向ける。表情には出なかったが、瞳でそれが見て取れた。

「いいや」

 それだけ応えて海を見つめる。

「! 不死を誰か、もしくは何かで得たということなのですか?」

「何故そんな事を訊きたがる」

 落ち着いた声に少しのわずらわしさを感じ取ったが、素知らぬふりをした。

「知りたいだけです」

「細胞の発現ならば人間にもその可能性があるとでも思っていたか」

「! 人が悪いですね……」

 眉をひそめた青年に目を向けて、「クク……」と喉の奥から笑みをこぼす。

「私を捕らえたければ麻酔を使えばよかろう」

 言われて視線を外した。

「それは我々の信条に反します」

「敬意か。そんなものは元より存在しない」

 相手の意思を無視している時点でね……とつぶやく。それに多少の怒りを覚えたが、冷静になるように努めた。
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