断崖のアイ
「私の腕の中で彼は息絶えたが、その目は後悔の念に満たされていた」

 相手は闘いたくて闘った訳ではない。

「人を殺める罪を相手に背負わせてしまった。私はようやく己の過ちに気がついた」

 崇高な使命の名の下に──と、罪なき者たちをことごとく捕らえる事が正しいのだろうか。

「だが、同時に君たちの考えも間違ってはいない」

 ならば沈黙を守ろう。モリス神父はそう決めたのだ。

「相手はかなりの手練れのようだね」

「はい……」

「君は君の思う行動をとりたまえ。神は全てを赦してくださる」

「わたしの思う行動……」

 キリスト像を見やる青年の肩に優しく手を添えた。
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