断崖のアイ
「!」

 血まみれの彼を眉をひそめて追いながら、ふと消えた右腕の部分が霞んでいるように見えて怪訝な表情を浮かべる。

 大きな岩に身を隠すように背を預けて腰を落とした隣に身をかがめた。

「……っう」

「!? まさか……」

 痛みに唸る彼の右肩の先を見て己の目を疑った。

 淡い金色の光が集まって右腕の形になり、それは徐々に形を成していく──吹き飛んだはずの右腕は、すっかりもとに戻っていた。

「奇蹟……?」

「そんな崇高なものではない」

 溜息を漏らして確認するように右腕をさする。

「大気中に存在する分子の構造を組み替えて細胞を構築しているだけだ。私の意思で成されているものではない」

 求めるような眼差しに仕方なく応えた。

「分子を?」

「原子の配列ともいうが……」

 幼い子供が向けるような目に当惑しながら借りたハンドガンを差し出す。
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