断崖のアイ

＊背徳の存在

「細胞の再構築……」

　戻った青年は、部屋の中を歩き回りながらぶつぶつと独り言を繰り返していた。

「不死になった経緯は教えてもらえなかったけれど、随分と科学的な……」

　それに、「あの男」とは誰のことなんだろう？

　聞きたいことは山ほどあるが、そう簡単に教えてくれそうにはない。捕らえてからゆっくり聞こうにも自分にそれが果たせるのかすら疑問だ。

「麻酔……」

　筋弛緩剤は量を間違えれば利かないし、死なせてしまう。しかし、彼に限ってはむしろ多めに設定しても構わないだろう。

「いや、だめだ」

　目を閉じて首を振る。己の身で相手を制してこその封印なのだ。それに麻痺系の薬が効かない相手も存在する、そんなものに頼ってはいけない。

「！」

　ノックの音が聞こえて振り返ると、開いたドアからモリス神父が笑みを浮かべて立っていた。

「何をウロウロしておる」

「すいません」