断崖のアイ
「製造No、6666。最後の人工生命体だ」

 重々しい言葉に青年は息を呑む。確証がなければ動くはずがない事は周知のはずなのに、信じられない自分がいた。

「アルカヴァリュシア・ルセタは経済が破綻し、分断され周囲の国々に併合された。その時に流れてきた資料を我々が入手した」

 表向きはな……と男は続ける。

「資料を入手してすぐに調査を開始した。そして疑問を抱いていた事柄が1本につながったのだ」

「それは一体……」

 男はひと呼吸して語り始める──

「60年前、アメリカの施設が何者かの手によって壊滅した」

 科学研究所という肩書きのその裏では、とある研究がなされていた。

「生物兵器だ」

「!?」

 施設が稼働を始めた10年後、突然の攻撃にたった1日で施設は壊滅した。

「ベリルは造られた5年後に施設から拉致されている」

「えっ!?」

「アメリカの施設が稼働を始めた頃と合致するのだ」

 目を細めて小さく溜息を吐き出し、再び歩き出す。
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