断崖のアイ
　ヴァチカン市国、サン・ピエトロ大聖堂の地下深く──

「アイアス司祭」

「！」

　石畳の通路で呼び止められて振り返ると、ステハリと呼ばれる白の祭服に身を包んだ老齢の男性が立っていた。彫りの深い顔立ちには年輪が刻まれ、白髪に浅黄色の瞳がその人物の重みを語っている。

「ワイゼフ司教」

　軽く会釈して呼び止められた理由を待つ。

「不死者の件はどうなっている」

「！　ユーリ神父に任せております」

「彼は大丈夫なのかね」

　新しく配属された若者に対する心配を口にしたのは当然だ。アイアスはそれに同意する視線を送りながらも、付け加えるように発する。
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