断崖のアイ
「教えてください!」

「……」

 いつものようにキャソックで現れた青年は開口一番、そんな言葉を張り上げた。

 冬の木々は、はにかむような色合いを見せて落ちてくる葉と残る葉に殺風景ながらも美しさを感じ取れる。

 自然公園の一角は、その風景に見合う2人の空間を形作った。

「なかなか頑張るじゃないか」

 感心したように発して歩き出す。

 その後ろを追い、風の音を聞きながら彼の見る方向を常に一瞥した。強烈な存在感は自然の中にあって主張する事もなく、違和感の微々たるものも感じさせない。

「……」

 優雅で落ち着いたその姿に声を無くす。

 人に造られた生命体──最もこの世界から切り離された存在であるはずなのに、どうしてだろう……美しく風景にとけ込んでいた。

「私はお前たちにとって背徳の存在なのだろう」

「!」

 ふいに発せられ我に返る。立ち止まってこちらに向けるエメラルドの瞳が、気のせいか少し暖かく感じた。
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