断崖のアイ

*祝福されし者

「私は造られた側であって全ては推測の域を出ない」

「その推測が出来るものがあるのでしょう?」

 期待する瞳に視線を外し、木に背中を預けて腕を組む。

「リーダーの名を覚えているか」

「! 確か、ベルハース教授」

 データの記憶を思い起こす。白髪で50代ほどの威厳のある風格と、何かの信念を持っているのだと窺える画像だった。

「彼はどうしてあなたを最後にしたのでしょう」

 それまで同時に作成していた作業をぱたりと止めた理由はなんなのだろう? 考えて行き着いた先は……

「ベルハースにとって私は完成体なのだろう」

 予想と同じ答えが返ってきて、青年は喜びと共に次の疑問が過ぎる。

「容姿……という訳ではありませんよね」

「生命としての脈動を確認した時点で可能な限りの検査が行われ、選別していたらしい」

 形成されるのには個体差がある、同時に作成したとしても同じ成長速度とは限らない。
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