断崖のアイ
『悪魔の器』と言われれば、彼ら『UnG』にとっては納得のいく名だ。しかし、その名前に別の意味があるとは考えもしなかった。

「神に叛乱を興した天使の冠から落ちた宝石を知っているかね」

「!? エメラルド……」

 それは大天使ミカエルの剣で冠から叩き落とされたとされている。

 かつて、神が愛した宝石は悲しみと共に地面にたたきつけられた──その悲しみがインクルージョンとして映し出される。

 そうして神の庭は人々の知られる処となった。

「まさかベルハース教授は……っ」

 青年は彼を凝視し、大きく頭を振る。

「そんな馬鹿な!」

「あの男は全てを見通したように私を不死まで導いた。いや、謀られたと言うべきか」

 魔女や魔導士は数多く存在していても、真に力を持つ者は多くはない。ベルハースはこれから起こる事をまるで解っていたかのように、見えない場所から操った。
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