断崖のアイ
「どういう……意味ですか」

「不死を求める魔女に耳打ちしていたのだよ、私が造られた時から」

 それを行うには苦難の道が待っている。最後に必要なのは……『ホムンクルス』。

「! ホムンクルス!?」

「そう言われれば私にしか目標を定めない」

 錬金術によって造られる人工生命の事だが、現代に置き換えれば確かにそれはベリル以外には存在しない。初めから造るよりも、元より存在する彼に狙いを定めるのは当然だろう。

 しかし、必要なのはホムンクルスではなく──魔女によって付けられる傷だった。

「魔女が儀式に使用する刃物は特殊なものだ。そして魔女がこれまでに行っていた儀式と呪文は……私を不死にするもの」

 そうとは知らずに手に入れた本に記されていた手順を踏み、彼の腕に走らせた傷から魔女の命が吸い込まれ、不死は果たされた。

「そんな……ことが」

 どうしてそこまで手の込んだ計画を実行したんだ。彼の口からつむがれる言葉は青年の疑問をさらに強くさせた。

 それを察するように彼は小さく溜息を漏らし一度、目を閉じる。

「私は祝福された者だそうだよ」

「!?」

 その言葉にビクリと体が強ばり、手を小刻みに震わせた。

「まさか……それでは彼が造ろうとしたのは──!?」
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