断崖のアイ

*赦されざる者

 応えない彼に驚愕の眼差しを向ける。無言である事が青年の問いかけに正解だと語っていた。

「では彼はキリスト教徒? いや、そんなことじゃない……」

 混乱しているようで、考えを整理しようと苦い表情を浮かべ頭を抱える。

「迎え……迎えとは神の使者のことか?」

「神の隣に用意されている玉座はいくつかあるのだろう」

 ずっと心の奥で否定してきた事を口にされ、心臓はドクンと大きな音を立てた。

「彼の目的はやはり……っどうしてそんなことを」

「私も全てを聞いた訳ではない。ベルハースの真意までは解らんよ」

 しれっと応えた彼に苛立ちを覚え、青年は語気を荒げる。

「あなたはっ……自分が造られたというのに」

「それはお前たちの見方だ。私にとってはただ生まれただけに過ぎない」

 まるで用意されたかのような言葉だが、それは事実だ。そこに何一つ挟む余地などありはしない。
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