断崖のアイ
『お前に善きものをもたらすものではないよ』

 以前に彼の口から聞いた言葉がこだまする。

 それから、何も語らずに無表情で風景を眺めている彼をしばらく見つめていると自然と言葉が突いて出た。

「もし……迎えが来たら、あなたはどうしますか?」

 青年の問いかけにも彼はやはり表情を崩さなかった。思慮深い瞳は何も表さず、ただ宝石のごとく青年を映し出す。

「さあ、どうだろうね」

 そうつぶやいて遠くを見つめた。
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