断崖のアイ
次の日──
「! 戻るのかね?」
「あ……はい」
明け方近くに礼拝堂に顔を出したモリス神父は、荷物を肩に提げた青年に声をかけた。
「そうか」
目を伏せて返した神父に青年はつぶやくように問いかける。
「正しいかどうかは、そのときになってみないと解りませんよね」
「! ……うむ。そうだな」
小さく笑んだ青年に応えると、彼はさらに笑顔を見せて軽く会釈した。遠ざかる背中は、以前に見た時よりも大きくなっているように感じられた。