断崖のアイ
 ヘインズの車で空港に向かう。

「いいんですか?」

 心配そうに声をかける彼に口角を少し上げた。

「はい、おしかりを受けるかもしれませんがそれで構いません」

 流れる風景がとても美しく、青年の視界を華やかにする。朝露を浴びた街は太陽の光りに照らされて幻想的に感じられた。

 数時間ほど揺られて空港の前に降りる。

「お気を付けて」

「ありがとうございます」

 去っていく車を見つめて小さく溜息を吐き出す。そうして自然公園の方角に顔を向け、苦い表情を浮かべた。

「……」

 わたしに彼を捕らえることは出来ない。
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