断崖のアイ
「わたしの前に指令を受けていた者は……」

 男は片眉をピクリと上げた。

「行方不明だ」

「! それはっ!?」

「一度や二度の失敗で罰など与えはしないというのに……」

 小さく溜息を漏らして先の暗い通路に視線を流した。

「逃げたということでしょうか」

「元よりそう簡単に捕らえられる相手とは思ってはいない。責任感の強い男であったから、耐えられなかったのかもしれぬが……ならば最後まで使命を全うする方を選んで欲しかった。君には途中で逃げ出すこと無く続けて欲しい」

「解っています」

「現在、ベリルの足取りを追っている最中だ。まもなく判明するだろう。それまで待機してくれたまえ」

「はい」
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