断崖のアイ

*名付けられた者

 次の日──検査していた結果のいくつかが渡されると、ベルハースの心中はそのデータに歓喜した。

「新たな生命体の作成は中止だ」

「え?」

 突然の指示に、そこにいた科学者たちが呆然とする。

「教授、どういうことでしょうか」

「もう十分にデータは集めた。これからはそのデータの検証と、現存している生命体での研究に移行する」

 ベルハースはきびきびとした動きで室内を動き、指示を与えていく。

「No.6666は隔離したのち、経過を見計らって専門家を呼び教育を施す」

「え!?」

「専門的な教育を受けた場合の経過も調べる必要がある。No.6666はその実験に適した生命体だ」

 驚く一同を見回し口を開いた。納得したと確認し、さらに続ける。

「人と同じ教育を施した実験という意味で名付けが必要だ」

「! 名前を付けるのですか?」

「そうでなければ意味がない」

 一旦、言葉を切りやや声高に名を告げる。

「ベリル・レジデントだ」

 発したあとベルハースは部屋から出て行った。
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