断崖のアイ
 その夜──施設と基地との境界線に2つの影。

「これをサイナスって奴に渡せばいいんだな?」

 男が渡された荷物と、言われた人物の写真を眺めて問いかける。

「うむ。お前が探せなくとも、相手から見つけてくれるだろう」

 低い声が暗闇に響く。男の声に怪訝な表情を浮かべながらも、ミリタリー服の30代ほどの男は金を受け取りその場をあとにした。

 その背中を見つめて男は口の端を微かに吊り上げる。

「共に神の御身のために……」

 つぶやいて施設に足を向けた。
< 63 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop