断崖のアイ

 そうしてベリルと名付けられた人工生命体は隔離され、母胎から出産されるまでの成長過程を経て人間でいう産声を上げる。

 鮮明な緑の瞳は、そこにいる人々の全てを見透かすように静かに見開かれていた。

「ふむ、成長速度は通常に戻ったのか」

 データを眺めながらベルハースが助手の男に口を開く。

「そのようです。あれだけの速度を見せていたのに、水槽から出たら途端に一般的な速度に戻りました」

「脳組織はどうなっている」

「驚愕ですよ。我々の範疇を越えていると言ってもおかしくはありません。おそらく短時間でほぼ全ての知識を身につける事が可能でしょう」

「専門家のリストは作ってあるな」

 助手はそれに頷き、プリントアウトしたリストを差し出した。それに目を通している彼に助手は少し躊躇いがちに発する。
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