断崖のアイ
「あの……」

「なんだね」

「言語学者は教授がご紹介されたとか」

「古くからの友人でね。奴の知識は確かだ」

「一ヶ月後には到着するとか」

「言語は重要だからな。今から十分な打ち合わせが必要なんだよ」

 半ば苛つき気味に応えパソコンをいじり始める。それを見て助手は納得したように離れていった。

「まったく……」

 その後ろ姿を一瞥し腹立たしげに吐き捨ててリストを再び見やる。喉の奥から絞り出した笑みに浮かぶのは紛れもない狂喜だった。
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