断崖のアイ
 一ヶ月後──

「ベルハース! 久しぶりだな」

「! ハロルド」

 40代ほどの男性が笑顔で駆け寄り、懐かしさに抱き合う。

「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

 栗毛と青緑の瞳が印象的なハロルド・キーロスは再会に握手を交わし肩を叩いた。

「よく来てくれた」

「私の力が必要だと言われれば飛んでもくるさ」

 級友同士の会話は短めに切り上げられ、ベルハースはさっそく本題に入る。

「君にはとある子どもの言語教育を頼みたい」

「! ほう?」

「あらゆる言語はもちろんだが、口調は尊大でなければならん」

 ハロルドはそれに少し驚いたがすぐに表情を戻した。

「まさか、見つけたのか?」

「うむ」

 鋭い視線で頷いた彼に、小さく溜息を吐いて苦笑いを返す。

「昔から熱心に語っていたが……そうか、見つけたのか」

 その表情はやや呆れ気味だった。
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