断崖のアイ
「国から催促は無いのか?」

 科学者たちが集まる部屋でハロルドはコーヒー片手に親友と言葉を交わす。

「説明して理解は得られた」

 生命体の作成を中止した事で上層部から問いただしの書類が送られてきた。

「これ以上の作成をした処で意味は無い。今ある検体だけでデータは十分に取れる」

 それにハロルドが苦笑いを返す。彼がこの施設に招かれて1年が経つが、ベリルはすでにある程度カタコトの言葉を話せるようになっており、続々と専門家が招かれていた。

 通常なら、単語を口にするのがせいぜいの年頃でベリルはすでに科学者たちと会話すら交わせるほどになっていた。

「半年で単語を喋ったのには驚いたよ。幼児に言語を教えるのは初めてだが、今まで教えてきた学生たちより上達が早い」

 少々の皮肉を交えて発する。言語やマナー関係は2時間ほどだが、他の分野は1日1時間の講義となっていた。

 それをほぼ、ぶっ通しで朝7時から21時まで行われる。途中にランチやティタイムが挟まれるが、ベリルはそれにストレスを少しも感じていないようだった。

「当然だ」

 ベルハースはニヤリと口角を上げて自信を見せた。
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