断崖のアイ
「経過はどうだね?」

 3歳になったベリルを監視カメラで見やり、データを眺めながら助手の青年に問いかける。

「素晴らしいです」

「細胞の方は?」

「取り出した細胞核からは未だ分裂が確認されません。なんとかクローニング出来ないものかと実験を重ねてはいますが──」

「そうでなくてはな」

 口の中でつぶやく。

「は?」

「なんでもない。生殖能力についてはどうだ」

「はい、こちらも難航しているようです。それに至る行為は可能のようですが、肝心の遺伝子が……」

「破壊されているのか」

「まだ成人ではないので、準備段階での検査ですが確証的ではないかと」

「そうか。感情の方はどうなっている」

 助手はそれに片眉をピクリと上げてノンフレームのメガネをくいと指で持ち上げる。
< 77 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop