断崖のアイ
とある朝──ベルハースはベリルの部屋を訪れる。
スライドドアをくぐると、白い壁に囲まれた室内が教授を迎えた。広い部屋に子どもらしい壁紙もオモチャも無く、デスクトップパソコンと分厚い参考書などが並べられていた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
無表情に発した子どもに笑顔を返す。見上げるベリルに目線を合わせるように片膝をつき、頭を優しくなでた。
その瞳の色を確認するように見つめると、口の端をやや吊り上げる。
「迎えが来るまでこの地を這いずり回るがいい」
「……?」
彼にしか聞こえない声でささやくと立ち上がり、世話係の女性に歩み寄った。その後ろ姿をしばらく見つめ、デスクに近づいて置かれている科学雑誌を手に取り椅子に腰掛ける。
男はそれを一瞥し女性に向き直った。
「何か変わった事は?」
「特にはありません」
白衣を整えて応える女性に教授は少し苛つく。
「君は己がベリルほどの価値を持っているとでも思っているのかね?」
「!?」
その言葉に青ざめて視線を泳がせた。
「あ……て、丁寧に扱います」
「それでいい」
冷たく言い放ち、部屋をあとにする。
スライドドアをくぐると、白い壁に囲まれた室内が教授を迎えた。広い部屋に子どもらしい壁紙もオモチャも無く、デスクトップパソコンと分厚い参考書などが並べられていた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
無表情に発した子どもに笑顔を返す。見上げるベリルに目線を合わせるように片膝をつき、頭を優しくなでた。
その瞳の色を確認するように見つめると、口の端をやや吊り上げる。
「迎えが来るまでこの地を這いずり回るがいい」
「……?」
彼にしか聞こえない声でささやくと立ち上がり、世話係の女性に歩み寄った。その後ろ姿をしばらく見つめ、デスクに近づいて置かれている科学雑誌を手に取り椅子に腰掛ける。
男はそれを一瞥し女性に向き直った。
「何か変わった事は?」
「特にはありません」
白衣を整えて応える女性に教授は少し苛つく。
「君は己がベリルほどの価値を持っているとでも思っているのかね?」
「!?」
その言葉に青ざめて視線を泳がせた。
「あ……て、丁寧に扱います」
「それでいい」
冷たく言い放ち、部屋をあとにする。