断崖のアイ
 3歳になった頃には5ヶ国の言語をマスターしハロルドを感嘆させた。

「どうだね」

 ベルハースが自信に満ちた表情で発すると、彼はその言葉に素直に頷く。

「素晴らしい、まさかこれ程とは……」

「彼はさらにその能力を発揮していくだろう」

 まるで未来が見えているように、恍惚とした表情を浮かべて発した。しかし、彼がそこまで自信を持つ理由も頷けるほどベリルの学習能力には凄まじいものがあった。

「あの子に真実は話すのか?」

「話さずともすでに理解してるようだ」

 ハロルドはそれに目を丸くした。

「データは見せるつもりだ。質問にも答える」

 ベリルには一瞬でその場の状況を把握し理解する能力があるという事は、すでに専門家の間でも周知の事実だ。

 物心がつく前から、なんとなく解ってはいたのかもしれない……そういう印象がベルハースにはあった。

 こちらが話さずとも相手の感情をある程度、理解する能力を備えている。それとは逆に、ベリルの感情はまったくといっていいほどこちらには窺い知れなかった。

 意図的なものではなく、感情の起伏が緩やかであると共に以前に調べた感情以外に欠如している部分があるのかもしれない。

「心理学者はなんと?」

「現在の時点では問題のある部分は無いそうだ」
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