断崖のアイ
「……」

　無事に着地して気配を確認し、ゆっくりと周囲の状況を探る。

　センサーや監視カメラ、人影の類を全て確認し終えると足音を忍ばせて施設に向かった。白い壁にひたりと背中を当て、まるで建物の振動を感じ取るように動きを止める。

　数分ののち、再びゆっくりした動作で壁沿いに足を運ぶ。しばらく進むと裏口らしきドアが視界に入った。

　液晶画面に触れるとスクリーンセイバーが消えてテンキーが表れる。それを見つめつつ、ベストから小さな機械を取り出し、しゃがみ込んで画面の下をごそごそといじったかと思うと配線が顔を出した。

　数本のコードを選び持っていた機械を接続する。

　接続を確認し機械を起動させると、液晶画面のテンキーが素早く色を変えドアの方から微かにカチリと音が立った。

「……」

　警戒しつつ進入する。薄暗い通路に人の気配はなく、設置されているカメラの位置を見ながら足を進めた。

　鈍い電子音だけが建物内に響いている……男はゴーグルに映し出されている表示に従い、さらに奥へと突き進んだ。

　目的の部屋にたどり着き、ドアを見つめる。監視カメラはドアに向けられているが、警報は鳴らなかった。

「……」

　カメラを一瞥しドアを開くと広い部屋にいくつかの区切りが確認でき、薄暗い間接照明のナイトスタンドが男の目的を指し示していた。

　極力、音を立てずに近づくと２つの輝きが暗闇に浮かんでいた。
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