断崖のアイ
次に目を覚ましたとき、目の前にのぞき込むベリルの顔があり右の頭部が痛んで手で押さえる。
「いつっ……」
「すまない」
「今のは誰ですか?」
彼はそれには応えず立ち上がり、青年の荷物を手に取った。
「!」
それに怪訝な表情を浮かべたが、頭を押さえていた手に冷たいハンカチがある事に気がつく。品の良い白い生地、その隅に翼に絡みつくツタの模様(もよう)が金糸で刺繍されていた。
訊いて欲しくないことなのだろうか? どことなく憂いを帯びた雰囲気に、青年は先の言葉を飲み込んだ。